97.ラストランカー(PSP)レビュー・感想・評価
■タイトル:ラストランカー
■発売日:2010年7月15日
■開発元:イメージエポック/カプコン
■発売元:カプコン
■定価:6,276円(税込)
■個人的ランク:B
プロローグ・あらすじ
世界中の戦士のほとんど…
およそ10万人の戦士が所属する組織「戦候機構バザルタ」、
通称「機構」が支配する世界。
戦士達はランキングによって格付けされ、
ランキング上位の者が「力」によって世界を統治していた。
そんな機構と関わりを持たないカンタレラという集落―――
そこである儀式の夜、ただ伝統を守り続けていくだけの生活に
未来を見ることができずにいた青年ジグは、
故郷を捨てて戦候機構バザルタにその身を投じることを決意する。
戦い続け、強くなり、ランカーの頂点に立つことができれば
生きる意味、そして自分自身の価値を実感することができる。
そう信じて―――
本作の見どころ
- ・強くなっていくのをランクが上がることで格付けで体感できる、オリジナリティあるゲーム性
- ・緊迫感あるランカーとのバトル。リアルタイム形式で、スキルや戦闘スタイルの掛け合わせが面白い
- ・綺麗めなグラフィックで描かれた個性あるキャラクター達。ヒューマンドラマ要素が強い
- ・下村陽子氏作曲の良質な音楽や、実力派の声優陣が物語を盛り上げている
ラストランカーの総評
なかなか面白い作だった。強さがランク化されていて、ランクが上に行くほど強い証という単純明快かつ身も蓋もない世界が舞台だが、自分よりランクが上の人間との緊迫感ある戦いは、最後まで楽しめた。上に行けば行くほど世間の見方が変わってくるのは他作ではなかなか無い感慨で、行ける場所が増えていくのも自分の地位の上昇感があって良かった。また、ランカーの数だけ登場人物がいるのだが、一人一人個性があり、七騎士や主人公を取り巻く主要人物など、魅力的なキャラが多いのもまた本作の魅力。最初の方はただひたすらにランクを高めるだけが楽しさだったが、中盤以降、そこにヒューマンドラマや意外性ある展開が盛り込まれるようになり、グッと作品の魅力が深まった。
マイナス点としては、何とも表現しがたいが、自由度が高そうな作風でありながら自由度が無く、ほぼ一本道であったところ。好きなランカーと戦って自分流の上の目指し方を楽しめるのかと思いきや、そうではなく、戦う相手が大体決まっていたところに窮屈さを感じた。また、主要都市が一つしかないほど世界が狭く、世界の魅力が乏しかったのもマイナス要素。もっと『その世界の人間が本当にその世界で生きて生活しているんだ』と感じられるリアリティも欲しかった。ゲームの奥行も乏しく、恋愛要素もあるようで無いに近いので、ランク上げを楽しむ以外の要素も欲しかったのが個人的な感想。
総じて、オリジナリティあるゲーム性で意欲作の部類だが、掘り下げが足りなく感じられた、そんな一作だった。大手カプコンの発出作で、グラフィック良好、下村陽子氏が紡ぐ良質な音楽、かっこいいエフェクト、しっかりしたインターフェースで安心して楽しめるゲーム性など、地盤はしっかりしているが、名作や傑作の部類かというと難しく、佳作の印象。個人的にはソウルトリガーが印象として近いような気がした。奇しくもシナリオ担当が同じ野島一成氏なので、それもあったかもしれない。
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ラストランカーの音楽
下村陽子氏が作曲担当で、戦闘曲を筆頭に良曲が揃っている印象。良くも悪くも個性という意味では乏しく、記憶に残りそうな曲は少なかったが、弱肉強食の世界観らしい勇ましい曲がメインで綺麗にまとまっている。同じ下村陽子氏が作曲したラジアントヒストリアは全体として『陰』の印象だったが、本作は明らかに『陽』の印象で、暗い曲も中にはあるが全体的に明るく、華やかな雰囲気があった。戦闘曲はかなり力が入っていて、通常戦闘曲、イビノス戦、ランカー戦、強敵戦、イベントボス戦など、バリエーションが豊富。
個人的に好きだった曲は、ボイスが特徴的な強敵戦の音楽『Born to Survive』、七騎士戦の『Crudelis et Magnificus』、ファズ戦の『Be the LAST RANKER -Battle Ver.-』あたり。通常戦闘曲もそうだが、ガンドアの音楽『華やかなる都・ガンドア』も繰り返し聞いていても飽きが来ない良さがあった。
ラストランカーのシステム
斜め見降ろし型の視点(場所により視点の位置は変わるが)で等身大サイズの主人公を操作する、一見はアクションゲームっぽい操作画面だが、実際アクション性は皆無に等しく、カメラワークや操作感も少し癖がある。お金を貯め、装備を整えて、スキルをセットし、コマンドセレクト型の戦闘をこなしていくところはオーソドックスなRPG。
ただ、戦闘は一風変わっていて、ターン制ではなくリアルタイムバトルで、攻撃やスキルなどはどのボタンでどれを使用するかを自分で割り当てて使用するという独特なシステムになっている。複雑なボタン操作は必要ないが、Rボタンを押しながら△ボタンを押したりなどがリアルタイムで求められるため、セミアクションバトルのような感覚の戦闘システムである。また、スキルネストと呼ばれるものにスキルチップを埋めて能力をカスタマイズしたり、『攻撃特化型』『ブレイク特化型』などのスタイルを戦闘中に上手く切り替えて戦うなど、ちょっとした戦略性も求められる。戦闘をこなしてひたすら自分のランクを上げていくというストーリーに則るかのように、本作の特徴は戦闘部分にウエイトが置かれている。
ストーリー上、自由度が高いシナリオのように思えがちだが、実際は一本道に近い。大筋はクエストをひたすらこなしながらランクを上げていく展開となる。フィールドも専用マップがあるわけではなくダンジョンと同じ仕様なので、世界を俯瞰で眺めることは出来ないが、ファストトラベルはしっかり整っていて、一度行った場所なら自由に行き来出来る。セーブはセーブポイントでのみ可能。
次ページでは本作の展開(感想・レビュー)を紹介
※場所の名称や人名、大雑把な展開を記載。物語の核心や人物の生死等、重要と考えられる要素は記載していませんが、多少のネタバレを気にしない方、またはプレイ後の閲覧をお勧めします
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