90.ヘラクレスの栄光III 神々の沈黙(SFC)レビュー・感想・評価
■タイトル:ヘラクレスの栄光III 神々の沈黙
■発売日:1992年4月24日
■開発元・発売元:データイースト
■定価:9,680円(税込)
■個人的ランク:B+
プロローグ・あらすじ
ある時、目覚めた主人公にはそれまでの記憶がなかった。
その代わり、彼には不思議な能力が備わっていた。
どのような高い所から落下しても死ぬ事はなく、不死身だったのだ。
自分は一体何者なのか。
唯一の手がかりは、繰り返し見る不思議な夢だけ。
夢の中の場所では、見覚えのない場所でアトラスの子孫と名乗る老人と子供、
他にも見たこともない人々がいた。
行き倒れの主人公を助けた妖精達は、
「貴方の夢の中にきっと記憶を解く鍵がある」と説き、
主人公は自分の記憶や存在理由を求めて、旅立つ。
本作の見どころ
- ・ギリシャ神話が世界観のベースとなっており、神々の思惑が交錯する壮大な物語を楽しめる
- ・物語後半の、目を見張るドラマチックな展開。怒涛のように押し寄せる衝撃の連続は必見
- ・ドラクエライクのオーソドックスなRPGで馴染みやすい
- ・良質な音楽。ギリシャ感や壮大な冒険感感じる旋律が物語を盛り上げる
ヘラクレスの栄光III 神々の沈黙の総評
前半はオーソドックス(だけど少し風変わり)なRPG、後半になって急激に名作としての存在感を帯びるという珍しい一作だった。元々、出だしの時点で様々な謎を抱えていたが、それらの謎を一気に解き明かしながら、予想だにしないダイナミックな展開で畳みかけてきたシナリオ力は、見事というほかない。前半が平坦だっただけに、そのギャップで尚更際立っていたように感じる。
後半のシナリオ展開だけで言えば、間違いなくSFC至上の一作であると言えたのだが、それ以外の部分で目立つマイナス要素も多かった。まず、グラフィックがロークオリティである点。また、エンカウント率が高い点や、歩行スピードが遅い点、ゲームバランスが粗めな点、魔法やアイテムの効果が分からないなどシステムが不親切である点、など。FF5よりも前に発売された作なので、グラフィックは仕方ないが、ドラクエやFFの二番煎じ感も強く、全体的にチープさは否めなかった。
とはいえ、クソゲーと呼ばれるほど破綻した要素は無く、安心して楽しめる一作であり、クリア後は大概のユーザーは良作の印象を抱くと思われる。フィールドの音楽と共に後半部分とエンディングは胸に強く残り、色々と感慨にふけってしまったところに作の力を感じた。ラストはわりと呆気なかったが、後になってからじわじわと作品の魅力が沁み出してきた。
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ヘラクレスの栄光III 神々の沈黙の音楽
ギリシャを彷彿とさせる民族系の音楽にファンタジー感が相まった、旋律の整った曲ばかりで良曲揃い。特別ゲームの前面に出てくるほどのインパクトは無いが、物語の雰囲気を丁寧に彩っている。
個人的に好きだったテーマは、何と言ってもフィールドのテーマの『失われた時は何処に』。この一曲で、本作の全てを語っていると言っても過言ではないと思う。バトルテーマの『異界よりの来訪者』も特別惹かれるものではなかったものの勇ましさが心地良く、何度聴いても飽きなかった。ボス戦のテーマ『強大な敵との闘い』は後半の印象的な戦い、仲間達との戦いを彷彿とさせる。トロイのテーマの『かつての栄華』やペルシャのテーマの『オアシスの人々』なども、良い民族感が出ていて味があった。『大洪水』のテーマはFF3を彷彿とさせるトラウマ曲。空を飛びながら、虚しく延々と聴かされたのが頭に焼き付いている。
ヘラクレスの栄光III 神々の沈黙のシステム
トップビューのゲーム画面・フロントビューバトルで、FCのドラクエ4のような感覚のオーソドックスなRPGスタイルで、馴染みやすい。また、画面の隅にはフレームのあしらいが施され、ドラゴンスレイヤー英雄伝説にも似ている。グラフィックはお世辞にも美麗とは言えず、SFC初期相応の粗さで、歩く速度もナイトガンダム物語並に遅い。
ただ、見た目がオーソドックスなため、本作独特の高所から落ちても死なない不死身設定や、仲間を9人ぞろぞろひきつれるシステム、"まくろきもの"の壮大なうねり、個性のある仲間のAIなど、ダイナミックな要素で色々と面食らわされる。これらは本作のストーリーの突出した魅力にまとう形になっていて、『見た目はドラクエっぽくてもドラクエとは違うんだ』というデータイーストの挑戦的な姿勢をもうかがえる。
戦闘も、味方の強さに応じて敵も強くなるというロマサガのようなスタイルになっていて、こちらもドラクエとの差別化に余念がない。しっかりレベルを上げていれば凶悪に感じるほどではないが、後半戦はかなりきつめ(とはいえサンサーラナーガ2やライトファンタジーほどではないが)。エンカウント率も高めで、戦闘速度もややもっさりなので、大きめのストレス要素に感じる。仲間がAIで、コマンド決めが主人公だけで済むのが救いか。
プレイ時間は計測されないので数字での比較は出来ないが、所感としては、長めなようでいて長くはなかった、という感覚だった。
次ページでは本作の展開(感想・レビュー)を紹介
※場所の名称や人名、大雑把な展開を記載。物語の核心や人物の生死等、重要と考えられる要素は記載していませんが、多少のネタバレを気にしない方、またはプレイ後の閲覧をお勧めします
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