42.スラップスティック(SFC)の展開
スラップスティックの展開
物語は、引越し先の街でお父さんから(叩き)起こされるところから始まる。
お、古き良きを知る者としては馴染み深いカラフルなドット絵。
街中を歩いていたら、さすが同じメーカーが作っただけあってガイア幻想記を彷彿とする雰囲気があった。
ほのぼのとした町の人たち、BGM……
そういや天地創造もそうだったけど、
クインテット作は初めの町が凄くのんびりした"良い街"が多い気がするな。
それはともかく、町長さんに挨拶をしに行ったり、街の人に話しかけたり、
引越し先の町に馴染む主人公とゲーム性に馴染むプレイヤーがマッチした感覚で物語は始まる。
『人の家に入るときはAボタンでチャイムを鳴らす』など妙なところがリアルに凝ってて面白い。
『警察』という組織があるのも、リアルだけど、
何となくゲーム世界で拝むのは興ざめするような気もするけど…
そうこうしている内に、お父さんから最初のミッションを与えられることになった。
それは『ロボット』を作ること。
何の予備知識もなく始めたゲームだけど、そこで話の趣旨が結構風変わりなことに気付いた。
ロボットか……あまり好きな方向性のジャンルでは無いけど、とりあえず進めてみよう。
ロボットを作る開発室に案内されたんだけど……
おおっ、この開発用のメインコンピューターは……どう見てもスーファミのコントローラー!!
だんだんとこのゲームのテイストが分かってきた。
ガイア幻想記や天地創造とはまったく違う、コミカルなテイストが強いゲームなのだと…
(この時点ではスラップスティックの意味すら知らなかった)。
無事ロボットを製作し、ステータスを振り分ける作業を経て、
(こういう自分好みの能力値に出来るシステムは結構好き)ようやく町の外に出る話の流れになった。
フィールドはどんな感じなのかと思ったら、
行き先のポイントを決めてボタンを押せば即移動できるロマサガのようなスタイル。
これはこれでフィールドの敵と出会わなくて済む面倒くさくならない利点があるんだけど、
世界の広さが感じられない設計なんだよなあ。
その後ようやく初めての戦闘が行われたんだけど、
緊張感のないポップな音楽が流れたと思ったら、戦うのは主人公ではなく作ったロボットだった。
なるほどね……シナリオ担当が主人公で、戦闘担当がロボットというシステムか……
主人公は子ども(ドット絵だとハッキリとした年齢はよく分からないんだけど)みたいなので、
こういうシステムなのは妥当でありながら面白いかも。
初めはよく分からなかったんだけど、純粋なターン制バトルではなく、
自ら歩かせて攻撃しに向かうLIVE A LIVEのようなシステムであることも知った。
LIVE A LIVEのように思考時間にも敵が動くようなことは無いんだけど…
時折主人公が戦闘中にヒョコッと顔を出して「GO!」だとか声を出すのが面白い。
そして戦闘が終わると、「ボクやったよ」と言わんばかりにロボットがカメラ目線になるのが…可愛い笑
難易度は正直、序盤からそこそこの手ごたえがあるような気がしていたけど
(クモかいじんが強くてエンカウントを避けていた…)、
一番最初に「ギャッ」となったのが、洞窟の中で出てきた最初のボス、メタクラブ。
ようーし、最初のボス戦……やったるどー、と思ったら、
数分後には画面上にGAME OVERの文字が……
まさかの全滅!!
セーブしたところからやり直しでこれは正直萎えた……
コミカルな画面のくせして何だこのニクらしい難易度は!
まだ序盤で投げ出すわけにはいかず、しょうがないので悔しさをやる気に変えて、
絶対次は快勝してやるぞ、とひたすらレベル上げ。
やはり強かったものの、何とかそれから倒すことが出来た。
それからの冒険はお墓→迷いの森→幽霊屋敷→南の島と進んでいくことになるんだけど、
この中で特別印象的だったのは幽霊屋敷と南の島だったな。
幽霊屋敷と呼ばれた洋館はWIZAPの幽霊屋敷を彷彿とさせて、
さすがにあそこまでおどろおどろしくは無かったけど
コミカルテイストのこのゲームにしては結構ヘビーな雰囲気を醸し出している。
このへんまで来る頃には思っていたんだけど、結構このゲームは細かい謎解き要素が多い。
ゼルダの伝説のように様々なアイテムを持ち、
特定のアイテムを使用することで先に進めたり話が進む、というようなことがよくあった。
特にびっくりホーンは使う機会が多く、
ちょっと行き詰ったようなことがあったら真っ先にこのアイテムを試していた笑
南の島は音楽自体が特徴的で、嫌でも印象付けられる感じだったけど、
明るく奔放なイメージとは裏腹に黒い思惑が渦巻いていたシナリオ。
まあ無料でご招待という時点で怪しさはムンムンだったけど……
村人の歓迎の踊りという歓迎してるのかバカにしてるのか分からないようなクセのある動きは、
音楽とセットで印象づいてしまったシーン。
それにしても、南の島の住人というとどうしてどのゲームも決まって
「お前 この話 聞きたいか」みたいなミスターポポみたいな片言の語り口調になるのだろう…。
まあそれっぽいっちゃそれっぽいけども。
この次に待ち受けるバイオ研究所は、
かなりの長丁場&物語がだんだんとシリアス寄りになってくる序盤の山場みたいなところ。
ハッカーは敵側のわりにどこか憎めない、等身大の感覚でほんわかしたりしたけど、
色んなアイテムを駆使して敵の目をかいくぐって行けなさそうなところを突き進んだり、
真面目にRPGをしてる展開になっていく。
かなり研究所内部は広く、カメレオングラスを調達するシーンでどこに行ったらいいのか分からず、
若干行き詰ったシーンもあった。
さて、このあたりからは物語が一気に破天荒な方向へと向かっていく。
ハッカーの基地に潜入シナリオは研究所を突破した主人公ならそうでもなかったのかもしれないけど、
いくら開発の天才で強力な戦闘用ロボットを従えているとはいえ、
子どもの行動力にしては凄すぎる気もするけど……
子どもが主人公といえばポポロクロイス物語もそうだったけど、
あっちは頼りになる仲間が沢山いたのに対し、
こちらは一人ではないとはいえ、仲間といえば自ら作った言葉も話さぬロボットのみ……
実質単身。
コテツやミントの手助けがあったりしたにせよ、大人顔負けの行動力は凄すぎるの一語に尽きるね。
さらに、それからは時代を超えて過去に行ったり宇宙に飛び出したりと、
いくらSFテイストのあるゲームとはいえ、面食らってしまう予想だにしない物語の展開。
もう序盤のコミカルさはカケラもない。
だけど物語の大詰め感があり、BGMもシリアスなものになり、
それでいながら言葉の節々にユーモアやシュールな部分はしっかり残されていて、
この作ならではの独特なテイストは崩さず保っていたところはさすがのバランス。
「おれはハッカーなんかやめて地味でいいからささやかな幸せをさがすことにするよ。
じゃあありがとうな。」
というイチハッカーが発していたさりげないこの台詞は、リアルで等身大で、
かつコミカルで温かみのある、この作の良さを表していたワンシーンだったと思う。
面白かったシーンは、
ガトーが「ここまでたどりつけたことはほめてやろう。だがそれもここでおしまいだ。」という
あまりにありふれた台詞の後、
人質だった天然っぽいティラミスが「それは困りますわ。そこをどいてくださいませ。」と言って
ちょっと彼を押したと思ったら
ポーンと彼が無言のまま呆気なく宇宙に押し出されてしまったシーン。
『ええええええ』と思った直後、
ティラミスが「確か外は宇宙でしたわね。ガトーさんはご無事でしょうか?」と
何食わぬ顔で漏らしていたのがまたウケてしまった笑
総じて、一風変わった作でありながらしっかりRPGとしてはまとまった、
良い佳作だったという印象で終わった作だった。
昔のゲームらしい、大雑把な感じは否めないが、
ボリュームはコンパクト気味にまとまっていて、変にダレることもない。
難易度はキツく、ゲームオーバースレスレのところで突破したシーンもいくつかあったが、
攻略のお世話になるようなことはなく、
ガッチリ経験を積んで戦略を考えて挑めば詰まったりすることはない絶妙なバランス。
主人公が小さな子どもゆえに恋愛的な要素はないが、
ポポロクロイス物語のように小さな子どもが大きなことを成す、夢と希望に溢れた作だと思う。
SFっぽいゲームが好きな人、根っからのRPGや風変わりなゲーム好きな人にはお勧め出来る。
最後に……本作はやたらとネズミが物語に絡むことの多いゲームだった。
これだけネズミがスポットを浴びたゲームは他にあるまい……!
ネズミのステマゲーム(どんなステマだ)かと思ったくらいだった。
- 1
- 2